限定承認という手続は、使い方によっては有意義な制度なのですが、なかなか使われないのは、単純承認や相続放棄よりも手続が複雑なためだと思われます。

そこで、この記事では、限定承認の手続を解説することにより限定承認の手続の流れを理解し、より身近な制度に感じていただければと思います。

なお、限定承認の中身については、限定承認の説明①及び限定承認の説明②説明しているので、参考になさって下さい。

 

家庭裁判所に対する限定承認の申述

まずは、限定承認を利用するためには家庭裁判所に限定承認の申述をすることが必要です。

ここでの注意点は以下のとおりです。

家庭裁判所への申述が必要

限定承認を選択するためには、家庭裁判所に申述することが必要になります。

単純承認の場合は、特に何らの手続の必要はありませんが、限定承認の場合は、相続放棄と同様に家庭裁判所での手続をしなければならないため、注意が必要です。

相続人全員での申述が必要

また、限定承認の場合は、相続人全員でこれを選択しなければいけないことにも注意が必要です。

相続放棄や単純承認の場合は各相続人毎に選択することができますが、限定承認の場合はこれを全員で行わないといけません。

家庭裁判所の申述に当たっては、財産・負債の目録が必要

家庭裁判所への限定承認の申述をするあたっては、遺産の目録(財産・負債)を作成してこれを提出しなければいけません。

したがって、限定承認をするにあたっては、遺産の調査をすることが必要です。

限定承認の前に財産を処分してはいけない

また、注意点として限定承認の前に財産を処分してはいけないという点があげられます。

仮に処分をしてしまうと、民法921条1項1号の「処分」があったとして、限定承認ができなくなってしまうためです。

3ヶ月以内の申述が出来ない時は伸長(しんちょう)の申立により期間の延長ができる

限定承認の申述については原則として相続開始後3ヶ月以内に限定承認をしないといけませんが、家庭裁判所への申し出があればこの3ヶ月の期間を延ばすことが出来ます。したがって、限定承認をするか否か悩まれている場合は、期間が経過する前に期間の伸長の申立をしましょう。

この期間の伸長についても家庭裁判所への申述が必要なので、注意が必要です。

 

限定承認申述の受理の審判と相続財産管理人の選任

相続人が複数いる場合において期間内に限定承認の申述が行われた場合、申述が受理されたことと相続財産管理人が選任された旨の審判がなされます。

この相続財産管理人というのは、相続人の中から選ばないといけないため、弁護士が関与する場合は、相続財産管理人の代理人として弁護士が動くことになります。

そして、相続財産管理人が、下記の手続のとおり公告や債権者への催告及び遺産の換価等の手続を行います。

相続財産管理人選任後10日以内の限定承認の公告

相続財産管理人が選任された場合は、選任されてから10日以内に公告をしないといけません。具体的には官報という国が発行する機関誌(?)に申し込みをして、相続財産管理人が選任された旨の公告をします。

なお、公告は相続財産管理人が選任されてから10日以内にこれをしなければならず期間が短いことから、注意が必要になります。

知れている債権者への催告

公告がなされた後、その時点で判明している債権者に対して被相続人に対する債権の請求をするように催告をします。

通常は、内容証明郵便を利用して債権者に対し催告することになります。

この催告に応じて債権者からは債権額の届出がなされることが多いです。

なお、これらの公告・催告の費用は後の配当をする上では相続財産に関する費用になることも知っておくと良いでしょう。

相続財産の換価・相続債務の評価

上記公告及び催告の手続のあと、債務がある場合は債務者への弁済のために遺産を売却しないといけません。

この遺産の売却方法ですが基本的には競売に付して現金化することになります。

なお、限定承認者が先買権を行使して相続財産を買い受ける場合は、家庭裁判所が選任した鑑定人が評価をした上で、評価額に従って売買をします。

債権と債務の調査をしたあと配当をする

相続財産の換価が完了しましたら、債権者に対する配当を行います。

プラスの遺産とマイナスの遺産を算出し、マイナスの財産の方が大きい場合は、各負債の割合に応じてプラスの財産を債権者に配当していくことになります。逆に、プラスの財産の方が大きい場合は遺産分割をすることになります。

このように配当が終われば、限定承認の手続が終了します。

終わりに

以上が限定承認の手続の説明でした。

限定承認は、単純承認や相続放棄のように一つの手続で終了するのではなく、家庭裁判所への申述後も手続が続いていく点で若干複雑さがあるのは否定できません。

しかし、先買権の行使等、メリットもある制度ですので限定承認を利用することによってメリットがある事案であれば積極的に限定承認の制度をつかうべきです。

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