以前の記事で、自己に不利益な内容の遺言書が発見された場合は、遺言の有効性を争うか遺留分減殺請求を行う方法で争っていくことを説明いたしました。

今回は、遺留分減殺請求を行う方法を選択した場合において、どのように遺留分減殺請求の権利行使を行い、また、遺留分減殺請求をする上でどのような点を注意しなければいけないかを説明したいと思います。

 

遺留分減殺請求の行使方法

遺留分減殺請求は請求をして初めて効果が発生します。何もしないでいると遺留分減殺請求の効果は発生しません。

したがって、他方の相続人に対して遺留分減殺請求の意思表示をしましょう。

この遺留分減殺請求の意思表示ですが、口頭でももちろん効果は発生しますが、口頭の意思表示だけですと後に遺留分減殺請求の意思表示をしたか否か争われる可能性が出てきてしまいます(裁判や調停では遺留分減殺請求をした方が、遺留分減殺請求の意思表示をしたことを立証しなくてはいけません。)。

したがって、そのような事態を防ぐために、通常は内容証明郵便及び配達証明郵便で遺留分減殺請求の意思表示を行います。

この遺留分減殺請求の意思表示によって、遺留分に基づく請求をスタートすることができます。

遺留分減殺請求の注意点

遺留分減殺請求を行う上で注意しなければいけないことがあります。それは以下の点です。

 

消滅時効に注意

1点目が消滅時効に気をつけなければならないということです。

遺留分減殺請求について、以下のように消滅時効が定められています。

「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知ったときから1年間行使しないときは時効によって消滅する。相続開始の時から十年を経過したときも、同様とする」(民法1042条)

簡単に言うと、被相続人が亡くなったこと及び遺留分を侵害する内容の遺言書や贈与を知った時から1年以内に遺留分減殺請求をしないといけないということです。

また、被相続人が死亡したことや遺留分を侵害する内容の遺言書等の存在を知らなくても、被相続人が亡くなってから10年経過した場合は遺留分減殺請求ができなくなってしまいます。

したがって、遺留分減殺請求をする場合は、可能な限り内容証明郵便等を用いて、早く遺留分減殺請求の意思表示をしましょう。

遺留分減殺請求によって当然金銭請求できるわけでは無い

2点目が、遺留分減殺請求を行った場合に当然に金銭の請求ができるというわけではないということです。

遺留分減殺請求の意思表示を行うことによって、遺留分を侵害する限度で遺言書の効力が修正されます。

どの範囲で修正されるかと言うと、遺留分の計算方法があり、その計算に基づき修正され、遺留分権利者が請求できる権利の内容が決まります。

その計算は相続財産の価額等から算出していくのですが、相続財産の価額等を使って計算していくことから、ついつい必ず金銭の請求ができると考えてしまいます。

しかし、これは誤りで、遺産の内容にもよるのですが、遺留分権利者からは金銭請求ではなく不動産の持分移転請求しかできない場合もあります。

もちろん、相手方が価額弁償といって、お金で解決するという意思を表示した場合は金銭請求できますが、必ず金銭請求できるわけでは無いということは覚えておいた方がよいかもしれません。

終わりに

以上、遺留分減殺請求の行使方法と注意点について説明を行いました。

遺留分の問題は一見簡単なように見えて、極めて複雑な問題が多くあります。

遺留分については計算方法が難しく、また、訴訟に発展することも多くありますので、訴訟を見通して交渉ができる弁護士に相談することが得策と言えます。

遺留分の請求をする際は、計算等も含めて弁護士に相談することをおすすめします。

遺留分の問題を含む相続問題についてお悩みの方は弁護士による無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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