叔母(父親の弟の妻)が亡くなったが、叔父及び両親は既に亡くなっており、叔母には子供も兄弟もいなかった、このような場合、法定相続人は誰になるのでしょうか。
答えは、法定相続人は不存在になります。なぜなら、叔母には第1順位の相続人である子供も、第2順位の相続人である親も、第3順位の相続人である兄弟もいないからです。
このように親族が存在するにもかかわらず、亡くなった順序によっては相続人が不存在になることがあります(例えば、これと異なり叔母が先に亡くなった後に、叔父が亡くなった場合は叔父の兄弟である父親が相続人になります)。
このような場合、叔母の遺産はどのようになるのでしょうか。また、叔母と生前つきあいがあった場合は、叔母の遺産を受け取ることができるのでしょうか。
以下では、相続人が不存在の場合における財産の扱い及び生前の親交に基づく財産分与の制度について解説をしていきます。
Contents
相続人が不存在の場合は最終的には国庫に帰属する。
まず、相続人が不存在の場合は、遺産はどのような処理を受けるのでしょうか。
これについてですが、相続人不存在の場合は、相続財産管理人という遺産を管理する第三者が裁判所より選任され、財産の換価手続を行い、借金がある場合はそれを精算した上で、最終的には遺産は国庫に帰属、すなわち国に持っていかれてしまいます。
民法959条は以下のように規定しています。
民法959条
前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第956条第2項の規定を準用する。
このように、納得がいかないところですが、何も手続をとらなければ、叔母さんの遺産は国に持っていかれてしまいます。
生前に関わり合いがある場合は特別縁故者に対する財産分与の申立を行い、遺産の分与を求める
それでは、叔母さんの遺産を国に持っていかれないためにはどのような手続をとればよいでしょうか。
これに対する回答は、特別縁故者に対する財産分与の申立を行うというものになります。それでは、特別縁故者とはどのような制度なのでしょうか。
特別縁故者とは
特別縁故者については、民法958条の3に規定があります。
民法958条の3
前条の場合において、相当と認めるときは、家庭裁判所は、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人特別の縁故があった者の請求によって、これらの者に、清算後残存すべき相続財産の全部又は一部を与えることができる。
このように、①被相続人と生計を同じくしていた者②被相続人の療養看護に努めた者③被相続人と特別の縁故があった者については、家庭裁判所が遺産の全部または一部を分与することの審判を出すことができます。
この特別縁故者に対する財産分与の申立という制度を使うことによって、叔母さんと生前関わり合いがあった場合は、遺産の分与を求めることができます。
分与をもらえる割合はどれくらいか
この特別縁故者による財産分与の申立をした場合、受け取れる財産の程度はどれくらいでしょうか。
これについては、条文上、全部または一部とされており、必ずしも全部もらえるとは限りません。
特別縁故者の申立をした場合は、既に裁判所から選任されている相続財産管理人が意見を述べるのですが、この意見が裁判所の審判に影響を与えることは間違いないといえます。そして、選任された相続財産管理人によって全部の分与が相当とするか、一部の分与が相当であるとするか異なることもあるので、相続財産管理人にどのような者が選任されるかは重要といえます。
したがって、特別縁故者による財産分与の申立をするにあたっては、申立人の方で相続財産管理人の意見に対する追加の意見書を提出する等対策をとることが必要になるでしょう。
終わりに
以上、相続人が不存在の場合においても遺産を取得する方法として、特別縁故者に対する財産分与の申立の制度を紹介しました。
今回の解説をするにあたって、亡くなったのが叔母さんであるという架空の事例を使いましたが、今回の事例の叔母さんに限らず、身寄りのない遠い親戚や、相続人がいたが全員が相続放棄した場合及び相続人がいない内縁の夫等(なお、内縁の妻・夫の相続に関しては、以前の記事で解説をしています。)がいる場合に、生前面倒を看た場合も特別縁故者による財産分与の申立をすることができます。
特別縁故者に対する財産分与の申立をするにあたっては、法律の要件に沿って申立をする必要があり、生前の関わり合いの立証の程度によって分与額が変わりうることから、特別縁故者による財産分与の申立をするにあたっては、経験がある弁護士に相談されることをお勧めします。
特別縁故者または相続人不存在の事例についてお悩みの方は無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。