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使い込み訴訟を多く扱うと、相手側がどのような反論をするか予想することができ、この反論に対してどのような再反論をすれば良いかわかるようになります。

以下では、遺産である相続預貯金の使い込み訴訟の案件においてよくされる相手方の反論とそれに対する対策について解説いたします。

 

引出しへの関与を否認する

まず、被告がする反論の一つとして、遺産である相続預貯金の引出しの関与を否定するものがあげられます。

具体的には、取引履歴から引き出しがされた自体は認めるが、これは被相続人本人が引き出したもの、または、被相続人を補助して引き出したものである、との反論です。

遺産である相続預貯金の使い込み訴訟で勝訴するためには、概ね、①被告が引き出したこと②その引出が被相続人の意思に反していることの二つを裁判所に認定してもらうことが必要です。

被告の反論は、上記①を否認するものであり、被告の反論が真実であれば原告の請求は棄却されます。

それでは、このような被告の反論に対してはどのような再反論を行えば良いでしょうか。

これに対しては、引出し場所と被相続人または被告の住所の遠近、被相続人の状態、払戻請求書の筆跡と被告の筆跡の同一性、被相続人口座の引出しと被告口座への入金等…の事情を適切に主張立証し、被相続人本人が引き出したことの不自然性を主張することによって被告の反論を崩していきます。

例えば、遺産である相続預貯金の取引履歴から判明した引出支店が、被相続人の住居から遠い一方で、被告の住居からは近い場合は、被告が引き出したことが一定程度推認されますし、上記事情に加えて相続預貯金の引き出し当時において、被相続人が引き出せる体調ではなかった場合は更に推認力を高めるでしょう。

これらの主張を裏付ける資料としては、被人の介護認定資料や診断書、取引履歴、預貯金の払戻請求書があり、これらを取得の上で証拠として提出します。また、状況によっては、調査嘱託という裁判所を介して証拠収集を行うこともあります。

相続預貯金の引出しを認めるも、被相続人本人に渡したとの反論

次に、相続預貯金を引き出したこと自体は認めるが、すべて被相続人に渡したとの反論がされることがあります。

これは、上記①②でいうと、①は認めるも②を争うことになります。

この主張も、仮に被告の言い分が真実であれば、原告の請求を棄却する事情になりますが、これに対してはどのような再反論が考えられるでしょうか。

これについても、預貯金の引出金額の多寡や継続性、被相続人の認知・身体状態から、被告の主張の不自然性を主張していきます。

例えば、遺産である被相続人の預貯金が1ヶ月に100万円ずつ引き出されていたことに対して、被告が被相続人に渡したと反論している場合、ケースにもよりますが、被相続人の生活状況からいって継続的にお金が必要になる事情がないとの再反論をすることが考えられます。

引き出した相続預貯金は被相続人本人のために使用した

更に、相続預貯金の引出しはしたが、本人のために使用したと被告が反論することも考えられます。

これも、②の相続預貯金の引き出しが、被相続人本人の意思に反しているということに対する反論になります。

この反論については、相続預貯金の引き出し金額が本人の生活費と比べて大きすぎるか否か、毎月の引出額と従前の生活費との比較はどうか、購入した物品と被相続人との関わりはどうか等の事情から反論を崩していきます。

 

引き出した相続預貯金は貰った(贈与を受けた)

更に、引き出した相続預貯金は被相続人から贈与を受けたものであるとの反論もよくされるところです。

この贈与の主張に対しては、被相続人と被告との関係から被相続人に贈与をするだけの動機がなかったこと、贈与の金額の多寡や贈与の継続性から贈与が不自然であること等再反論することになります。

なお、相続預貯金の使い込みにおいて被告が贈与を受けたとの主張がされ、それが認められた場合は、後の遺産分割において特別受益の問題になります。

したがって、贈与の主張が認められ、請求棄却がされたからといって肩を落とす必要はありません。

終わりに

以上、相続預貯金の使い込み訴訟における被告の反論について解説をしました。

記事において解説したとおり、被告の反論を類型化することはある程度可能になります。

もっとも、ある程度類型化ができたとしても、証拠を出す順番や、主張の構成方法、他の事例等の比較について考え、個別具体的に対応する必要があります。

このことから、使い込みが疑われる場合は、相続預貯金の使い込み訴訟を多く扱ったことがある弁護士に相談すべきでしょう。

使い込みについてお悩みの方は無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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