親が亡くなった後、遺言書が発見されたが、残された相続人全員にとって納得のいかない内容の遺言書であったということがあります。

この場合、相続人全員にとって納得いかない遺言書であったとしても、親の意思を尊重して遺言書にしたがうというのも一つの手段です。とはいえ、他方で、どうしても納得いかない内容の遺言書であることも考えられます。

それでは、仮に遺言書の内容が相続人全員の納得がいかないものであった場合に、相続人全員で遺言書と異なる遺産分割をすることができるのでしょうか。

以下では、遺言書と異なる遺産分割の可否について解説をしていきます。

 

遺言書と異なる遺産分割は原則として可能

結論を先に言えば、争いがあるも遺言書と異なる遺産分割は原則として可能であるといえます。

遺言書と異なる遺産分割協議を有効とした裁判例として、さいたま地裁平成14年2月7日判決がありますが、この判決は、遺言書を作成した被相続人の意思としては無用な紛争を防止する点にあるところ、遺言の内容と異なる遺産分割協議をしても被相続人の意思に反しないことや、全相続人の意思に合致するのであれば、むしろこれを有効とするのが妥当であることを理由に有効にしています。

なお、遺言書と異なる遺産分割をする上での注意点としては、遺贈を受けた受遺者が相続人以外の者であった場合は、遺言書と異なる遺産分割をするにあたってはこの受遺者の同意も必要ということです。

受遺者が同意せずに相続人間で遺産分割をしたとしても、受遺者が所有する物を遺産分割していることになるため受遺者の同意を得ていない遺産分割は無効となる可能性が高いでしょう。

例外的に遺言書と異なる遺産分割が認められない場合もある。

上記のとおり、遺言書と異なる遺産分割協議をすることは原則として可能ですが、以下のとおり例外的に遺言書と異なる遺産分割が認められない場合もあります。

 

遺言執行者がおり、遺言執行者の同意が無い場合

まず、遺言執行者が遺言書によって指名されており、その遺言執行者が遺言書と異なる遺産分割に同意をしていない場合は、遺言書と異なる遺産分割協議は無効になるといえるでしょう。

民法の規定上、遺言執行者は、遺言書の内容を実現させる義務があり、かかる義務を遂行するために遺言書の内容と異なる処分は禁止とされています。

したがって、遺言執行者がおり、遺言執行者の同意がない場合は、上記の民法の規定がストレートに適用されるため、遺言書と異なる遺産分割協議は無効になるでしょう(但し、この点は争いがあり、また裁判例も遺言執行者の同意が無く遺言書と異なる遺産分割協議をした事案において、遺言執行者からの請求を棄却しているものもあるので、これと異なる結論になる可能性があることも留意して下さい)。

遺言で遺産分割協議が禁止されている場合

次に、遺言書の中で遺言書と異なる遺産分割協議をすることが禁止されている場合は、遺言書と異なる遺産分割協議が無効になるでしょう。

この場合は、遺言者である被相続人の意思に反する可能性があるからです。

終わりに

以上、遺言書と異なる遺産分割の可否に関する記事を作成いたしました。

遺言書と異なる遺産分割については、有効になる場合と無効になる場合があることについて解説をいたしました。

もっとも、この問題については確定した最高裁判例がでているわけでもなく、また、理論的にも難しい問題があるためこのような遺産分割を行う場合は弁護士に相談した方が確実であるといえるでしょう。

遺言書と異なる遺産分割を行いたいと考えられている方は、相続問題に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。

遺言書及び遺産分割についてお悩みの方は弁護士による無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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