自分には身寄りが無いが、長年連れ添ってくれたペットがいるので、ペットに何らかの財産を残したい、または、ペットに財産を残さないまでも、自分が先立ったことによって残されたペットの面倒がきちんとされるのかが不安である、このように遺産相続に関してペットに何らかの手当を取りたいと考えることがあります。
それでは、上記のような事例において、ペットに遺産を相続させることはできるのでしょうか。以下では、ペットによる相続の可否について解説をしていきます。
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ペットは遺産を相続することはできない
ペットに遺産を相続させることはできるか、と問題提起をしておきながら端的に結論を言うと、ペットは遺産を相続することはできません。
なぜなら、権利義務の主体は「人」でなければならないところ、ペットは残念ながら人ではないからです。
そうすると、例えば、遺言書の中で金1000万円を犬のタロウに相続させるとの記載があったとしても、このような遺言書の条項は無効になってしまうのです。
条項の内容を工夫することでペットの生活環境を維持することができる
それでは、遺言者が亡くなった後はペットが従前のように誰かに面倒を看てもらうことはできないのかと聞かれれば、遺言書の条項を工夫することによっては可能という回答になります。
例えば、信頼できる第三者を見つけて事前に同人の承諾をとった上で、ペットが亡くなるまで愛情を持って育てることを条件に例えば預貯金1000万円を遺贈するという条項を遺言で定めます。
遺言書にこのような定めがあれば、第三者は遺言者の死後、遺言者のペットを飼育することによって、預貯金1000万円を受け取ることができるので、遺言者が亡くなった後でもペットを飼育するインセンティブが働くことになります。
このように、遺産を単純に譲渡するのではなく、遺産を譲渡をするにあたって条件や負担を設定することを負担付遺贈または条件付遺贈と言います。
そして、この負担付遺贈又は条件付遺贈を利用することによって、ペットに遺産を相続させなくても、遺言者の死後ペットの面倒を看るとの内容を実現することができるのです。
負担付遺贈と条件付遺贈の違い
前述のようにペットへの相続と関連して負担付遺贈と条件付遺贈というものをご紹介しましたが両者はどのように違うのでしょうか。
遺贈の効力に関する違い
まず、前者は当然に遺贈の効力が生じるのに対し、後者は条件が成就して初めて遺贈に効力が生じるという点に違いがあります。
例えば、ペットの面倒を看るという点が負担であると解釈されれば、負担を履行しなかったとしても(後述する取消の請求を受けるとしても)遺贈の効力自体は生じるのに対し、条件である場合は、条件が成就して初めて遺贈の効力が生じるということになります。
両者の違いは上述のとおりですが、条件であるのか負担であるのかは一見して明らかでないため、遺言書を作成するに当たっては条件であるのか負担であるかを明確にした方が良いでしょう。
負担付遺贈の場合は相続人による履行催告や取消請求が認められる。
前述のとおり負担付遺贈の場合は、条件付遺贈と異なり負担を履行しないとしても直ちに遺贈の効力が無くなるわけではありません。
それでは、負担を履行しない場合はどうなるかというと、相続人及び遺言執行者は受遺者に対して履行の催告をすることができ、また、少なくとも負担が履行されなかったのであれば遺言者は遺贈をしなかったと言える場合は、相続人及び遺言執行者は家庭裁判所に対して遺贈の取消をすることができます。
この遺贈の取消の結果、遺贈の効力が消滅し、受遺者が受けるべきであった利益は相続人に帰属することになります。
終わりに
以上、ペットへの遺産相続の可否と絡めて、負担付遺贈等による財産承継の方法及び負担付遺贈、条件付遺贈について解説をしました。
負担付遺贈等はうまく使いこなせることができれば便利な制度ではありますが、負担が履行されなかった場合の手続等、難解な部分もあるので、これを使うにあたっては相続に詳しい専門家が関与することが必要です。
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