特別受益の典型的な例として、親から子供に対する生前贈与があげられます。
このように、特別受益と聞けば、生前贈与というわかりやすい例を思い浮かべるのではないでしょうか。
もっとも、このような親から子への生前贈与という典型的な場面以外でも、特別受益の問題は生じ得ます。
以下では、生前贈与という典型的な場面以外における特別受益として、被相続人が借地権を有する土地の、相続人による底地購入が特別受益にあたりうることについて解説をしていきます。

 

事例の紹介~被相続人の借地権と相続人による底地の購入~

問題となる事例は以下のとおりです。

  • 被相続人Xの相続人は、長男Aと次男Bである。
  • Xは生前東京の土地(更地の評価額5000万円)に借地権を有しており、借地の上に建物を建て生活をしていた。
  • Aは、Xが一人で暮らすのが難しくなったことから、Xと同居することにした。
  • Xとの同居後、地主からAのもとに底地を購入しないかという話があり、Aは底地を購入することにした。Aは本件土地が借地権割合が6割の地域にあったため、地主から2000万円で底地を購入し、Xの同意のもと土地の上の建物を壊し、新たに二世帯住宅を建てた。
  • 底地の購入後、XからAに対しては地代等の金銭的給付はなされなかった。
  • Xの遺産は、金融資産3000万円のみであるが、Xの死後、Bは、Aには特別受益があるので、自分が金融資産を全部取得すると主張した。

このような事例において、AはXの遺産を取得することができるのでしょうか。

 

底地を購入した相続人は借地権相当額について被相続人から贈与を受けたと評価されうる

Aに特別受益や寄与分がなければ、金融資産3000万円はAとBで半分ずつ分けることになります。
それでは、Aに特別受益はあるのでしょうか。
この点について、結論を先に言うと、Aは特別受益を得ているといえます。
というのも、Aは更地評価5000万円の土地を2000万円で購入しています。このようにAが安く購入できたのは、Xが土地の借地権を有しており、底地価格で地主が売却したからです。
そして、Aは底地を購入したにすぎないため、本来であればXを借地権者として、XとAとの間で借地契約が存続するはずです。
ところが、底地購入後、XからAに対して金銭的給付がなされておらず、地代が支払われていないため、Xは借地権を放棄したと評価されます。
そうすると、結局Aは底地価格(2000万円)で更地(5000万円)を取得していることになり、これは借地権相当額について、Xから譲渡を受けたと評価することができるのです。
したがって、底地の購入に伴い、AはXから特別受益を得たといえます。

そうすると、Aは3000万円の特別受益を受けており、遺産が3000万円ですので、Aの具体的相続分は、

(3000万円(遺産)+3000万円(特別受益))×1/2-3000万円=0円

となり、Aは原則として遺産を全く受け取れなくなるという結論になります。

終わりに

以上、親が借地権を有する土地の底地を、相続人が取得した場合の特別受益について解説をしました。
解説のとおり、Aによる底地購入が特別受益にあたりますが、当のXとA本人たちにはその意識はないと思われます。

もっとも、このような意識の有無にかかわらず特別受益に該当してしまいますので、底地の買取には注意が必要です。
Xは生前どのような対策をとればよかったかと言うと、遺言書を書けば問題は解決できました。Xが遺言書を書けばAとBは均等な割合で預貯金を分割することができたのです。
もっとも、Xが生前何らの措置を取っていなかったとしても、詳しくはここでは述べませんが、特別受益に関し、Aの方はAの方で戦い方がありますので、この記事をごらんになった方がAと同じ立場であってもあっさりと諦める必要はありません。
いずれにしても、借地関連の相続はややこしい問題が多くあります。
したがって、借地の問題かつ相続に詳しい弁護士に相談されることをお勧めいたします。

借地権及び特別受益についてお悩みの方は弁護士による無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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