被相続人が死亡した後に、相続手続のために戸籍を調べたところ、知らない間に親族の一人、または、第三者との間で養子縁組の手続がされていたというような事態がまれにあります。

被相続人との間で養子縁組がされているとどのような点に不都合が生じるかというと、例えば、養子がいることによって兄弟の自分が相続人になれないという事態や、または、養子がいることによって子供の数が増え、それにより自分の相続分が減ったり、遺留分額も減るという自体が生じる点にあります。

このような不都合を解消するためには、養子縁組無効確認をする必要があるということを以前の記事で解説いたしました。

それでは、被相続人である養親が死亡している場合において、養子縁組の効力を争いたい場合は、誰を相手にどのような手続をとれば良いのでしょうか。

今回は、上記の点につき解説をしていきます。

 

被相続人の死亡後は、養子縁組無効確認調停を行っても意味が無い

まず、被相続人である養親が死亡している場合ですが、この場合は養子縁組無効確認調停を申し立てる意味はありません。

縁組無効確認事件は、一般的に調停前置と呼ばれ、訴訟の前に調停を申し立てなければいけないとも言われていることから、このような結論に疑問をもつかもしれません。

しかし、養親が死亡している場合は、調停を申し立てても縁組の効力を否定することができません。

家事事件手続法277条には以下のとおり規定されています。

家事事件手続法277条

人事に関する訴え(離婚及び離縁の訴えを除く。)を提起することができる事項についての家事調停の手続において、次の各号に掲げる要件のいずれにも該当する場合には、家庭裁判所は、必要な事実を調査した上、第一号の合意を正当と認めるときは、当該合意に相当する審判(以下「合意に相当する審判」という。)をすることができる。ただし、当該事項に係る身分関係の当事者の一方が死亡した後は、この限りでない。

 当事者間に申立ての趣旨のとおりの審判を受けることについて合意が成立していること。

 当事者の双方が申立てに係る無効若しくは取消しの原因又は身分関係の形成若しくは存否の原因について争わないこと。

家事事件手続法の制定前の家事審判法の時代は、同法但書のような規定がなかったため、調停での縁組無効の合意→合意に相当する審判、という流れで縁組を無効にしてきました。

しかし、家事事件手続法制定後は、太字部分のように当事者の一方が死亡した場合は合意に相当する審判はできないとされています。

したがって、縁組無効確認調停を申し立てたとしても、養親である被相続人が死亡した場合は、このような合意に相当する審判ができないことから、縁組無効確認調停をする意義が乏しいと言えます。

 

養子縁組無効確認訴訟をいきなり提起することになる。

このように、養親が死亡した場合は、縁組無効確認調停を行わないことから、養子縁組無効確認調停を申し立てること無く、いきなり養子縁組無効確認訴訟を提起することになります。

この場合、養子を相手方にして、原告または養子の住所地を管轄する家庭裁判所に人事訴訟を提起することになります。

訴訟を提起するためには法律上の利害関係が必要

なお、養子縁組無効確認訴訟を養親及び養子以外の者が提起する場合は、縁組の無効について法律上の利害関係を有する場合にのみ訴訟の提起が許されることになります。

例えば、被相続人の兄弟が養子縁組が無ければ自分が相続人になることを理由に縁組無効確認訴訟を提起する場合は、法律上の利害関係があることになることになりますので、訴訟の提起が許されることになります。他方で、このような法律上の利害関係が無い場合は、訴えは却下されることになります。

終わりに

以上、養親が死亡している場合における縁組無効確認の手続について解説をしました。

解説ではわかりやすいように養親が死亡した場合における手続を説明しましたが、これとは逆に、養子が死亡した場合においても手続は同様になります。

養子縁組の当事者の一方が死亡した場合の縁組無効確認については、いきなり訴訟を提起しなければならないことから、弁護士を関与させることが必要です。

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