遺産分割協議を行ったが、相続した不動産について、換価分割も代償分割も行われず、共有分割のままで遺産分割が行われる場合があります。
共有分割はできるだけ避けるべきとの解説を以前行いましたが、やむを得ない事由で共有分割にせざるを得ないこともあります。
共有分割となった場合、共有不動産を実際に利用している相続人は、不動産の利用を続けることができるため問題ありませんが、他の相続人は共有不動産の持分を有しているものの、利用ができないという不都合が生じます。
以下では遺産分割の結果、相続不動産が共有分割となってしまったときにおいて、どのような処理を行えばよいかについて解説をしていきます。
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共有者を相手として共有物分割請求訴訟等を提起して共有関係を解消する
遺産分割の結果、相続した不動産が共有のままになったとしても、再度遺産分割を行うわけではありません。
このような場合は、最終的には地方裁判所に対し、共有物分割請求訴訟を提起して解決を図っていきます。
もちろん、訴訟というのは最終的な手段になりますので、相手方の対応によっては相続不動産の任意売却の交渉や、簡易裁判所に対して共有物分割調停を申し立てることも考えられます。
ただ、遺産分割において共有分割をするに至った経緯として、相続人の一人が一方的な主張をしたことによって共有分割をせざるをえなかったという事情も往々にしてあります。
このような場合は、任意での話し合いは期待できないため、相手方の対応を見つつ共有物分割請求訴訟等の手続を取ることが必要です。
共有物分割請求訴訟のメリット
このように、最終的には共有物分割請求訴訟を提起しますが、共有物分割請求訴訟のメリットはどのような点にあるのでしょうか。
共有物分割請求訴訟のメリットとしては、訴訟の終了後、強制的な解決手段を得ることができるということです。
共有物分割分割訴訟の判決または和解調書が出来上がると、判決または和解調書に基づいて強制執行等の措置をとることができます。
これと異なり任意交渉や共有物分割調停の場合は、相手方が交渉に応じ、スピード解決することが可能性もありますが、相手方が合意しなかった場合はあらためて共有物分割請求訴訟を締結しなければいけません。
また、任意交渉の場合において、合意を締結したにもかかわらず約束を履行しない場合は、更に訴訟等の手続をとらないといけない場合も出てきます。
このように、 最終的な解決手段を得ることができるというのが共有物分割請求訴訟のメリットです。
共有物分割請求訴訟による解決方法の種類
共有物分割請求訴訟の判決の種類としては、以下のようなものがあります。
現物分割
まずは原則的な方法として現物分割があります。これは、例えば不動産を分筆した上で、それぞれの共有持分権者で分けるという方法です。
もっとも、この方法は基本的には建物には使えないですし、分筆によって価値が下がってしまう場合もこの方法を使うことはできません。
全面的価格賠償
相続人の一人が、代償金を支払うことにより不動産の単独取得を希望する場合は、代償金の引き換えに不動産を単独取得することもできます。
この場合において、全面的価格賠償が認められるためには、相続人の一人がただ単に単独取得を希望するだけでなく、価格賠償金を支払える資力があることや全面的価格賠償を認めることが相当であること等について主張・立証されることが必要になってきます。
競売を命じる判決
現物分割及び全面賠償をとらない場合は競売を命じる判決になります。
競売を行うと一般的に売却額は低くなってしまう場合があるので、あまり望ましくはありませんが、競売という結末があることによって、相続人の一人が従前一方的な主張をしていた場合であっても、競売よりは任意で売却したほうが得であるとして、和解に応じることもあります。
終わりに
以上、遺産分割後に共有となった共有不動産の解決方法について解説をしました。
解説をしたとおり、遺産分割の結果共有分割にしてしまうと、上記のとおり共有物分割請求の手続をとる必要が出てくることから、できる限りこれを行わないほうが良いでしょう。
とはいえ、やむを得なく共有分割をせざるをえない場合があるのは前述のとおりです。
このような場合は、相手方との交渉や訴訟、強制執行手続等、複雑な手段が必要です。したがって、共有分割請求に関しては、これを得意とする弁護士に相談されることをお勧めします。
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