遺言書が見つかったが、遺言書の作成当時、被相続人は遺言を書ける状態ではなかった、または、遺言書の筆跡が被相続人のものではなかった等の事情がある場合があります。

このような場合は、遺言無効確認調停または遺言無効確認訴訟を提起して遺言書の効力を争うことになります。

それでは、遺言無書の効力を争う場合は、どのような資料を収集して訴訟等の準備をした上で、訴訟等を提起し、勝訴した後はどのような手続を行わないといけないのでしょうか。

以下では、遺言無効確認訴訟等の準備から訴訟終了までの手続等について解説いたします。

 

被相続人の筆跡が記載された書面や医師の診断書等の客観的資料を用意する

遺言書の有効性を争う場合は、以下のように主張する遺言の無効事由によって主張・立証する内容は変わってきますので、準備する資料も異なります。

遺言書の自筆性を争う場合は被相続人の筆跡が記載された他の書面を用意する

遺言書の自筆性を争う場合、すなわち、遺言書の筆跡が被相続人の筆跡と異なることから被相続人が遺言書を作成したものではないと主張して遺言書の効力を争う場合は、遺言書以外の被相続人が作成した書面を複数準備しましょう。

遺言が無効になる要素①では遺言書の文字と被相続人の筆跡が異なるという事実は必ずしも決定的な要素ではないことを説明しましたが、筆跡が異なるということは自筆性を否定する事情の一つになることは間違いないですし、事前にある程度容易に用意できる資料であるため訴訟等をするにあたっては用意した方がよいでしょう。

遺言能力を争う場合は、被相続人の医療記録や介護記録を取得する

被相続人の遺言能力を争う場合、すなわち、遺言書が作成された当時、被相続人の認知状態に問題があり遺言書を作成する能力が無かったと主張して遺言書の効力を争う場合は、遺言書作成時またはこれと近接した時期における被相続人の医療記録や介護記録を取得しましょう。

遺言能力を判断する上で、一つの要素になるのは、長谷川式簡易知能評価スケールと呼ばれる指標です。

この長谷川式簡易知能評価スケールは、認知症の有無について判断する点数であり、認知症の程度まではわからないとも言われていますが、一般的に長谷川式簡易知能評価スケールの点数が10点以下であれば、遺言能力が疑わしくなってくるといえるでしょう。

したがって、長谷川式簡易知能評価スケール等の認知症の指標を確認するためにも、診断書やカルテ、また介護認定を受ける上で作成した資料(主治医意見書、認定調査票)等を収集して、認知状態を確認し、遺言能力が無かったことを立証できるようにしましょう。

遺言無効確認訴訟等に期間制限(時効)は基本的にはない

それでは、上記述べたように資料の収集が完了し、遺言無効確認訴訟等を提起する準備が出来たとして、いつまでに遺言無効確認訴訟を提起しないといけないのでしょうか。

これについては、基本的に遺言無効確認訴訟に時効はないため、時効を過度に気にする必要はないのですが、あまりに昔の遺言書の効力を争うのは、立証の面で困難になってきます。

そのため、時効の面はともかくとして、遺言書の無効は早期に主張した方がよいでしょう。

遺言執行者等を被告として地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起する

遺言無効確認訴訟等を提起する準備が出来た場合は、被告の住所地または被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所に対し、訴訟を提起します。

この場合に被告とすべき者ですが、相続人全員ではなく、遺言執行者が遺言書の中で定められている場合は遺言執行者を定められていない場合は、遺言によって利益を受ける者を被告とすることになります。

 

遺言無効確認訴訟で勝訴した後は残った相続人で遺産分割が必要

遺言無効確認訴訟の中では、遺言が無効になる要素①等で説明した事由等を主張していくことになります。

そして、当事者双方による主張がなされ、主張が出そろったところで判決または和解ということになります。

判決等によって無効とされるか否かはもちろんケースバイケースですが、仮に遺言書が無効であることが確認された場合は、遺言書は無かったものと扱われます。

したがって、仮に遺言書によって遺産分割方法の指定(ex:特定の遺産Aは、相続人Xに相続させる等)や相続割合の指定(ex:遺産のうち、3分の2は妻に、残りの3分の1は長女に等)がされていた場合は、これがなかったことになるため、相続人間全員で新たに遺産分割を行わないといけません。

なお、遺言無効確認訴訟後に新たに遺産分割を行うと解決まで時間がかかることから、遺産のボリュームにもよりますが、遺言無効確認訴訟の和解の中で遺産分割を含めた話し合いを行うこともあります。

終わりに

以上、遺言無効確認訴訟における準備事項及び訴訟で訴訟終了後の手続に関する記事を作成しました。遺言書の無効確認は、無効事由を十分に主張立証しなければならないため、戦略が大事になってきます。

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