被相続人に借金がある、または、借金があるかもしれないと考えたときには、まずは債務の有無について調査をするのがよいと以前の記事で解説いたしました。
被相続人に債務があったことが判明した場合ですが、相続人としてはまずは相続放棄を考えるかもしれません。
もっとも、借金は相続したくないけれど、遺産の中に欲しい遺産があるというときに、このような希望を実現できる手続があればその手続を利用してみたいと考えるのではないでしょうか。
以下では、そのように借金は相続したくないけれど、遺産の中に欲しい財産がある場合においてこれを限定承認という手続を利用して実現する方法について解説をしていきます。
限定承認を使うメリットがある具体的な事例の紹介
まず、限定承認の特徴としては、前回説明したとおり、相続した借金の責任が相続財産の範囲に限定される点にあります(そのため、「限定」承認と言います。)。
したがって、遺産のうち、借金が含まれている場合は限定承認を使うメリットがありそうです。
しかし、限定承認を利用すると財産は換価(原則は競売。)しないといけないので、単純承認等の場合と比べて非常に手間や時間がかかりますし、遺産を現物で取得することができなくなってしまいます。
ですので、借金がある場合に限定承認を利用するメリットがあるとまでは必ずしも言えません。
それでは、限定承認を選択するメリットがある場合とはどのような場合でしょうか。
それは、冒頭でも述べた通り、被相続人の借金の方が資産より多く債務は相続したくないけれど、遺産の中に自己が取得したい財産がある場合です。
例えば、以下の事例です。
事例の紹介
Xさんは父のYと自宅で同居していたが、Yが亡くなった。
自宅の土地はXさんが所有していたが、建物についてはYと2分の1ずつ持分を有していた。
Yは事業をしていたがうまくいかなかったため、遺産は建物と借金だけだった。
Xさんは借金の責任を負いたくないが、建物については自分が住んでいるので何とか取得したい。
上記の事例でXさんは建物を相続するために単純承認をしてしまうと、父の借金についても相続し、債権者に弁済する責任があることになります。
他方で、Xさんが相続放棄をすると、建物の持分権を次順位の相続人が相続し、Xさんはその相続人から持分権を買い取らないといけないことになり、建物の取得は不確実になります。
先買権の行使による解決
このような場合に限定承認の先買権という制度を使うと、問題が解決できる可能性があります。
先買権とは、取得を希望する遺産について家庭裁判所が選任した鑑定人が評価をし、相続人が評価額を支払うことによって特定の遺産を取得できる制度です。
この制度により限定承認により、債務の責任が相続財産の範囲に限定される一方で、相続人は特定の遺産を取得することができます。
終わりに
上記述べたように、財産よりも借金の方が多いので借金については相続したくないが、遺産の中に取得を希望する財産がある場合に限定承認を選択するメリットがあります。
ただ限定承認は、手続も複雑ですし、税金面でも単純承認等とは異なりますので、確実にこれを行うためにもぜひとも弊所までご相談ください。
限定承認を含む相続問題についてお悩みの方は弁護士による無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、または本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。