預貯金の使い込みが発覚する時期ですが、預貯金の使い込みは遺産分割協議の成立前に発覚することが多いです。

なぜなら、遺産分割をするまでの間に、

遺産を調べた預貯金の残高が減っていた怪しいと感じたため取引履歴を調べた→多数回の引出があった!

という流れで使い込みが発覚すること多いからです。

もっとも、遺産分割が完了したに預貯金を調べたら多数の引出(使い込み)が発見されることも中にはあります。

それでは、このように遺産分割後に預貯金の使い込みが発覚した場合、もはや預貯金の使い込みの責任を追及することはできないのでしょうか。

 

遺産分割後でも原則として預貯金の使い込みの責任追及はできる

これに対する回答ですが、遺産分割後であっても基本的には使い込みの追及ができると考えて良いです。

なぜなら、預貯金の使い込みは不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権に基づき返還請求を行っていくのですが、これらの権利は遺産分割の対象外であり、遺産分割協議書で定められた事項の範囲外になるからです。

遺産分割協議書では不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権については、何らの取り決めがされていないことになるため、遺産分割完了後も預貯金の使い込みの責任追及ができます。

したがって、使い込んだ側が、遺産分割協議書があるから使い込みの責任追及はできないはずだ!と主張してもあまり反論にはなっていないことになります。

遺産分割協議書に清算条項がある場合は預貯金の使い込みの責任追及ができない

ただし、例外的に遺産分割協議書に清算条項がある場合は、預貯金の使い込みの責任追及ができなくなってしまいます。

清算条項とは、例えば、「相続人Aと相続人Bは、AとBの間に何らの債権・債務関係がないことを相互に確認する。」というような文言で、当事者相互で今後何らの請求をしないという内容の条項です。

このような清算条項があると、預貯金が使い込まれたことによって発生した不当利得返還請求権または不法行為に基づく損害賠償請求権が消滅してしまいます。

したがって、原則として清算条項があると預貯金の使い込みによる責任追及ができなくなってしまうので、遺産分割協議後に預貯金の使い込みの責任追及をするに当たっては、遺産分割協議書にこのような清算条項が無いかを確認しましょう。

 

遺産分割協議書に清算条項が無くても使い込みの責任追及ができない場合もありうる

また、遺産分割協議書に上記のような清算条項がなかったとしても、例えば、遺産分割の場において、相続人間で遺産に関する話は全て終わりという合意があった場合は、場合によっては清算の合意がされていることを理由に預貯金の使い込みに対する責任追及ができなくなってしまう可能性があります。

もっとも、そのような清算の合意があったことを使い込んだ側が立証することは難しいですし、遺産分割協議書にそのような文言がなかったことからすれば、そのような清算の合意は無かったと推認される可能性もあるので、そこまで心配することはないでしょう。

終わりに

以上、遺産分割後に預貯金の使い込みが発覚した場合でも基本的には使い込みに対する責任追及ができることについて解説をしました。

上記述べたとおり、遺産分割協議成立後も使い込みに対する責任追及は原則として可能なので、預貯金の使い込みが疑われる場合は弁護士に相談をしましょう。

ただし、遺産分割協議書に清算条項がある場合は、預貯金の使い込みに対する責任追及ができなくなってしまいます。

したがって、相談の際には遺産分割協議書を持って清算条項が存在しないかを確認することも含めて弁護士に相談されることをおすすめいたします。

遺産である相続預貯金の使い込みについてお悩みの方は無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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