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久しぶりの投稿になります。

預金の遺産分割の対象の有無については、以前の記事で解説をしたとおり、従前の判例から判例変更がなされ、預金が遺産分割の対象となる財産である旨判示されました。

この判例と派生する判例として、最高裁判決(最判平成29年4月6日第1小法廷判決)が昨日出たようですので、今回はこの判例の解説をいたします。

 

本判例で問題となった争点と判示内容

問題となった点は、遺産分割前に相続人が単独で預金の払戻請求ができるかという点

まず、この判決で問題となったのは、遺産分割が成立する前に銀行に対し相続人が単独で預金の払戻請求をすることができるかという点です。

先日の最高裁決定は、預金が遺産分割の対象となる財産である旨判示していますが、この最高裁決定前においては、預金は遺産分割が必要な遺産ではなく、遺産分割を経ることなく相続開始と同時に各相続人の相続分に応じて当然に分割されるものと扱われていました。

これはどういうことかというと、相続人は遺産分割を経ることなく、相続分に応じて預金払戻請求権を取得するということであり、相続人が単独で預金債権を取得できる以上、相続人は遺産分割前において銀行に対して預金債権の行使ができるということでした。

したがって、例えば遺産の大半が預金であるが他の相続人が話し合いに応じない、このような場合には相続人が単独で銀行に対し預金の払戻請求を行い、実質的に遺産分割を行うという手段がとられていました。

私が担当した案件においても、遺産が預金しかない状態であり、他の相続人が話し合いに応じない事案において、相続人が単独で銀行に対し預金の払戻請求を行ったことがあります。

本件においても、相続人遺産分割前に単独で銀行に対し払戻請求を行い、この払戻請求が認められるかという点が問題になりました。

今回の判示事項としては、やはり遺産分割前に相続人が単独で預金の払戻をすることができないということ

上記争点について、本判決は次のとおり判示したうえで、結論として遺産分割前に相続人が単独で預金の払戻請求をすることはできないと判示しています。

共同相続された普通預金債権は,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである(最高裁平成27年(許)第11号 同28年12月19日大法廷決定・民集70巻8号登載予定)。

定期預金については,預入れ1口ごとに1個の預金契約が成立し,預金者は解約をしない限り払戻しをすることができないのであり,契約上その分割払戻しが制限されているものといえる。そして,定期預金の利率が普通預金のそれよ りも高いことは公知の事実であるところ,上記の制限は,一定期間内には払戻しをしないという条件と共に定期預金の利率が高いことの前提となっており,単なる特約ではなく定期預金契約の要素というべきである。

他方,仮に定期預金債権が相続により分割されると解したとしても,同債権には上記の制限がある以上,共同相続人は共同して払戻しを求めざるを得ず,単独でこれを行使する余地はな いのであるから,そのように解する意義は乏しい(前掲最高裁平成28年12月 19日大法廷決定参照)。この理は,積金者が解約をしない限り給付金の支払を受けることができない定期積金についても異ならないと解される。

したがって,共同相続された定期預金債権及び定期積金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはないものというべきである。

本判例は、相続開始と同時に預金払戻請求権が当然に分割されない以上、みぶ相続人が単独で払戻請求をすることができないということを判示しています。

このように、本判例が出た以上、今後は従前とは異なり、原則として遺産分割前において銀行に対し預金の払戻請求をすることはできないものになると思われます。

 

終わりに

以上、昨日判決がなされた最新の最高裁判例をご紹介いたしました。

記事内で紹介した通り、今後は預金のみが遺産である場合や遺産の大半が預金である場合において、他の相続人が話し合いに応じない場合は、銀行に対する払戻請求ではなく、遺産分割協議または調停を行うことになりますので注意をしてください。

当事務所では預金の遺産分割をはじめとする、遺産分割、遺言無効、預貯金の使い込み等の相続事件を重点分野として扱っております。

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