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遺産相続の発生後、遺産分割をするために遺産調査をしたところ、遺産の中に株式が含まれることがあります。

遺産の中に株式がある場合は、どのようなことに注意しなければいけないでしょうか。

また、例えば、被相続人が生前に株式投資をよく行っていたので相続開始後に遺産を調査したところ、どこにも株式がみつからない、このような場合はどのように遺産である株式の調査を行えばよいのでしょうか。

以下では、遺産の中に株式が含まれる場合の留意点について、株式の遺産分割等を含めて解説をしていきます。

 

相続した遺産の中に株式があるか否かの調査方法

まず、遺産の中に株式があると思われるにもかかわらず(例:生前、父はよく株式投資をしていた)、具体的にどのような銘柄があるかわからない、このような場合はどのように株式の遺産調査を行えばよいのでしょうか。

遺品を整理して相続した遺産の中に株式があるかを調べる

まずは、被相続人の遺品を整理しましょう。遺品を整理する中で、証券会社からの連絡書面等を発見できれば、それが手掛かりになって遺産の中に株式が含まれているかわかることがあります。

被相続人が生前利用していた証券会社が判明すれば、証券会社に問い合わせを行います。

相続人であれば、戸籍等の必要資料を証券会社に提示することによって証券会社は証券口座等の情報について開示してくれますので、問い合わせを行い生前保有していた株式の有無についての手がかりを見つけましょう。

証券保管振替機構に対して、登録済加入者情報の開示請求を行う

遺品の整理をしたけれども被相続人が生前に株式を有していた手掛かりが何も見つからない、または、他の相続人が遺産を開示してくれず、結局遺産の中に株式が含まれているかがわからない、このような場合もありえます。

このような場合は、証券保管振替機構に対し、登録済加入者情報の開示請求を行いましょう。

この登録済加入者情報の開示をすることによって、株主が株式等に係る口座を開設している証券会社、信託銀行等の名称及び登録内容(住所・氏名等)を確認することができます。

口座を開設している証券会社が判明すれば、その証券会社に対しどのような株式を有しているか確認することができますので、証券会社に照会をすることによって、遺産の中に株式が含まれるかを確認することができます。

相続した遺産の中に株式が含まれる場合、遺産分割をする必要がある

以上が株式の遺産調査の方法になりますが、調査をした結果、相続した遺産の中に株式が含まれている場合、相続人としては次にどのようなことをすればよいのでしょうか。証券会社に直接株式の払戻しを請求するのでしょうか。

先に結論を言えば、相続した遺産の中に株式が含まれる場合は、株式の遺産分割をする必要があります。

株式の遺産分割をしない場合、相続開始後遺産分割までの間において、相続の対象となる株式が準共有状態のままになり、株式の売却等の処分ができなくなります。

また、非上場株式については以下のような不都合が生じますので、このような不都合を解消するためにも遺産分割が必要になります(なお、非上場株式が遺産でない場合は、以下の項目は若干難しいので読み飛ばしていただいて結構です。)

非上場株式については遺産分割をしないと議決権等の行使に不都合が生じる

例えば、父親と相続人である子供らが共同で会社を経営しており、当該会社の株式について父親と子供らがそれぞれ株式を有していた場合において(父親50%、子供A20%、子供B20%、子供C10%)、父親が死亡したとします。

この場合、相続開始後遺産分割前において、父親の50%の株式についてAさんらがそれぞれ均等の割合で権利行使できれば話は早いのですが、そのようにはなりません。

あくまで、Aさん、Bさん、Cさんは父親の50%の株式全体を準共有しているにすぎないため、株式の遺産分割をしないと、原則として各人が単独で権利行使することはできないということになります。

それでは、株式の遺産分割未了の間においてどのように権利行使をするかというと、以下のような規定がありますので、この規定にしたがう必要があります。

会社法106条:

株式が二以上の者の共有に属するときは、共有者は、当該株式についての権利を行使する者一人を定め、株式会社に対し、その者の氏名又は名称を通知しなければ、当該株式についての権利を行使することができない。ただし、株式会社が当該権利を行使することに同意した場合は、この限りでない。

会社法106条のとおり、株式の遺産分割前に会社の議決権を行使するためには、会社に対し1名の権利行使者を通知する必要があります。

そして、この権利行使者の指定については、判例上(最判平成9年1月28日)、持分価格の過半数によって決まるとされていますので、例えばAさんとCさんが、Aさんに権利行使をさせるよう決めた場合は、Bさんの意向にかかわらずAさんが単独で父親が有する株式の権利行使をできることになります。

 

相続した株式の評価の方法について

以上、相続した遺産の中に株式が含まれる場合は遺産分割を行う必要があることについて説明いたしました。

では、実際に株式の遺産分割を行う場合、遺産分割方法として、相続人の一人が単独で遺産である相続株式を取得し、他の相続人がこの相続人から取得しなかった株式の代償金を受領するということがあります。

それでは株式の遺産分割をする場合、代償金の算定の前提として株式の評価はどのようになされるのでしょうか。

相続した株式が上場株式の場合

まず相続した株式が上場株式の場合は、評価額を定めることは比較的簡単です。

この場合は、インターネット等で株式の価額については調べることが可能ですので、あとはいつの時点での評価額とするかだけが問題となるだけです。

この評価時期については、相続開始日の終値であったり、相続開始月の終値の平均値、遺産分割時等、相続人間で合意をした時点の評価額をもとに分割を行います。

相続した株式が非上場株式の場合

他方で、非上場株式の場合は、上場株式と異なり取引価格が定まっていないので、評価方法が難しくなります。

非上場株式の評価方法としては、類似業種比準方式(類似の業種の株価を基に算出する方法)や純資産価額方式(会社の純資産と株式総数によって算出する方法)、配当還元方式(株式の配当から株式の価値を算定する方法)等の方法がありますが、通常、評価額については税理士や公認会計士等の専門家によって算定してもらうことになります。

但し、専門家に株式の評価額の算定を依頼することによって費用が発生してしまいます。

したがって、既に会社に顧問税理士がいる場合は、まずは顧問税理士に株式の価値を算出してもらい、通常よりも費用を低廉に抑えるという方法もあります。

遺産である株式が被相続人の生前に解約や使い込まれている場合

以上が、株式の遺産分割方法等になりますが、関連する問題として、遺産である株式が被相続人の生前に無断で解約・払戻しがされているという場合があります。

通常株式が解約される場合は、株式の売却代金は銀行預金口座に入金されることが多いので、この場合は、預貯金の使い込みの問題と同様に考えることになります(別記事を参考にしてください)。

したがって、この場合は、預貯金の使い込みと同様の請求をしていくことになります。

終わりに

以上、相続した遺産の中に株式が含まれる場合の注意点について解説いたしました。

遺産の中に株式が含まれる場合において特に問題が生じることが多いのは、非上場株式になります。

このような場合は、議決権の行使や評価額の算出で争いが生まれる可能性があるので、まずは、相続した時点でそのことを知っておく必要があり、不明な点は弁護士に相談しましょう。

なお、今回は相続開始後における注意点について解説をしましたが、現在株式を保有している経営者側(被相続人)の立場からは、生前に相続対策をとることが必須であると言えます。

当事務所では株式の遺産分割をはじめとする、遺産分割、遺言無効、預貯金の使い込み等の相続事件を重点分野として扱っております。

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