遺言書を作成したほうが良いと言われることは多いですが、それはいったいなぜなのでしょう。

また、遺言書の作成方法については書籍等も多く出ており、一人で遺言書を作成することも可能と言えそうな中で、専門家である弁護士を遺言書の作成に関与させる必要性はあるのでしょうか。

以下では、遺言書作成及び弁護士が関与する必要性について解説をした上で、遺言書の種類及びそれぞれのメリット・デメリットについて解説を行っていきます。

 

遺言書作成の必要性

遺言書はなぜ作成する必要があるのでしょうか。

遺言書というものは法律上必ず作らなければいけないものではありませんが、遺言書がないと誰にどのような財産をどれくらいの割合で取得させるかを指定することができません。

家族関係は様々だと思いますが、例えば、自分によく世話をしてくれた子供に対しては多くの財産を与えたいと考えることもあると思いますし、逆に家族に迷惑をかけた親族に対しては財産をあげたくないと考えることもあると思います。

いずれの場合であっても、遺言書を作成しないと相続人間で均等に財産が分けられることになり、遺産の分配に財産の持ち主の意思が反映されないことになります。

このように、遺産の分配に遺言者の意思を反映させるためには遺言書を作成する必要があると言えます。

なお、被相続人の生前において被相続人の面倒をよく看た相続人に対しては、遺産分割において『寄与分』という制度を利用して、当該相続人に多くの遺産を取得させることもできる可能性がありますが、『寄与分』は簡単には認められない制度であるため、面倒を看てくれた相続人に財産を与えたいのであればやはり遺言書を作成することがより確実であると言えます。

この点に加え、遺言書を作成することによって、その後の(もちろん遺言書の内容にもよりますが)遺産分割の必要性が無くなるというメリットもあります。

遺産分割において相続人間でもめることはよくありますので、相続人間の紛争を予防できるという点も遺言書作成の必要性の一つと言えるでしょう。

司法書士、行政書士でなく弁護士に遺言書の作成を依頼するメリット

それでは、遺言書を作成する必要性があるとしても、遺言書の作成を弁護士に依頼する必要性があるのでしょうか。

遺言書を作成するにあたっては、

  • 遺言書の有効性に争いが無いようにする。
  • 遺留分を侵害しないようにする。
  • 相続させる遺産及び分割方法を具体的に特定すること

等の注意点があります。

有効性に争いが無い遺言書を作成するためには、作成された遺言書が無効となった事案や、結果的に遺言書は有効と判断されたが遺言書の有効性について紛争になってしまったもの等、紛争事例を良く知り、判例や裁判例の傾向についても熟知していなければなりません。

このような紛争事例については、他の士業ではなく弁護士が多く関与するので、後の紛争を予防できる遺言書を作成するためには、遺言書作成に弁護士を関与させることが有効適切であると言えるでしょう。

弁護士が遺言書に作成した場合の流れ

遺言書の作成に弁護士を関与させた場合は、どのような流れで手続を進めていくのでしょうか。

弊所の例ですがまず、

①実現したい遺産の分配方法の聞き取り

という作業から始まります。①の作業では、遺言者様の意思を反映させつつ、仮に遺言者様の意思通りの内容の遺言書を作成した際の法的な問題点(例:遺留分を侵害する危険性がある等)を指摘したうえで、可能であれば代替案等の提示を行います。

②遺言書案の作成

実現したい遺産の分配方法を法的に実現するために、遺言者様のご希望を基に遺言書の文言を弁護士が作成いたします。

弁護士が作成した遺言書の文案をご確認の上で、自筆証書遺言であれば、文案を遺言者様にご確認いただいた上で、遺言者様にご記入いただきます。

他方で、公正証書遺言であれば、文案作成前後において弁護士が公証人との打ち合わせを行い、必要書類の収集等を含め公正証書遺言の作成準備手続を進めてまいます。

③遺言書の保管及び遺言の執行

遺言書の作成後、作成された遺言書を遺言者様の方で保管していただくか、または、ご希望があれば弁護士の方で保管することも可能です。

遺言書の種類と内容

さて、以上遺言書の作成の必要性等について解説をしましたので、具体的な遺言書の種類について解説をいたします。

まず、遺言書ですが、その種類としては、①自筆証書遺言②公正証書遺言③秘密証書遺言と三つあります。
まず、③の秘密証書遺言は、遺言書の内容を秘密にできるというものですが、手続が面倒な割に内容を秘密にする必要性があまり大きくないため、あまり使われておらず、私自身もこの③の遺言書の作成に関与したことはありません。
よく使われるのは、①公正証書遺言と②自筆証書遺言ですので、この二つについて説明いたします。

公正証書遺言とはどのような遺言書か

まず、公正証書遺言ですが、遺言者が公証人に対して遺言書の内容を口述し公証人が作成する遺言書です。

この公正証書遺言ですが、遺言者の死後に遺言書の有効性に関する紛争発生の可能性が小さい遺言書であり、遺言書を作成するのであればおすすめしたいものになります。

公正証書遺言のメリット

公正証書は、公証人という法的専門家である第三者が関与して作成されるものですので、遺言書を作成した時点において遺言者が遺言能力を有していたことがある程度推認できると考えられます。ですので、遺言者の死後において遺言書の効力を争われる可能性は低くなります。
また、公証人は元裁判官等の法律に精通した専門家が就くので、遺言書作成後に遺言書の内容が特定されておらず遺言の内容を実現できないという事態が生じる可能性も低いです。
以上のようなメリットから、遺言書作成後の紛争発生防止の観点からみると、遺言書の中では一番良い遺言書であると考えられます。

公正証書遺言のデメリット

他方で、公正証書遺言のデメリットももちろんあります。

公正証書遺言を作成するに当たっては、公証人と何度か打ち合わせをする必要性が出てくるので自筆証書遺言と比べ手間や時間はかかってしまいます。

したがって、例えば、遺言者の体調が優れず遺言書作成までに時間が無い場合には、公正証書遺言の利用がしづらい場合もあります。

また、費用面でいえば、公正証書遺言書の作成にあたって公証役場に手数料を支払わなければならないので、費用についてもいくらかかかってしまいます。
こういった点が公正証書のデメリットにあたると思います。

自筆証書遺言とはどのような遺言書か

これに対して、自筆証書遺言というものもあります。

この自筆証書遺言は、遺言書を全部自分で書き(ワープロやパソコンで作成した遺言書ではダメです。)、日付、名前、本文を自署した上で、印鑑を押して作成する遺言書です。

印鑑は認印でもかまいません。ただし、後の遺言書の信用性にもかかわってくるので、可能であれば実印を押した方がよいでしょう。

自筆証書遺言のメリット

この自筆証書遺言のメリットとしては、紙とペンと朱肉があれば(最悪拇印でも可。)遺言書として完成するので、遺言者の様態が悪いなど急ぎの場合でも遺言書を作成できるというメリットがあります。
また、公正証書遺言等と異なり第三者の関与が無く自分一人で作成できるので、遺言書の内容を事実上秘密にすることができるというメリットや費用が低廉であるというメリットもあります。

自筆証書遺言のデメリット

他方で自筆証書遺言にはデメリットもあります。

1点目が、遺言書の作成において第三者の関与が無い場合には、遺言者の遺言能力が争われる可能性があるということです。
遺言能力とは、単独で有効に遺言書を作成する能力のことをいいますが、公正証書遺言と異なり、公証人などの利害関係のない第三者が関与していないので、遺言者の遺言書作成時の状態を立証することが難しくなります。

2点目が、遺言書を作成したものの遺産やその分割方法の特定が不十分であるため、結果として遺産を相続させることができない危険性があるということです。
遺言書とは特定の財産を相続させることを目的に作成するものですが、きちんと形式を整えないと、表現内容によっては、遺産のうちどの遺産を相続させるのか特定ができていなかったり、登記ができなかったりすることもあります。
そうすると、結果として遺言者の希望が果たせられないという事態が生じる可能性もあるのです。

終わりに

以上、遺言書作成の必要性及び遺言書の種類並びにそれぞれのメリット・デメリットについて説明をいたしました。

「遺言書を作成していればこのような紛争は生じなかった・・・」という事例を多く見ている立場からすれば、円満な相続にするためにも遺言書は作成したほうがよろしいと思います。
遺言書の作成及び内容についてお悩みの方は相続問題に強い弁護士に相談されることをお勧めいたします。

遺言書作成については相続問題を多く扱う弊所による無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号またはメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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