ISHI_IMG_4869_TP_V被相続人の死後、遺言書が発見されその遺言書には自分にすべてを相続させるとの内容が記載されていた、ところが、後日遺産を何も受け取ることができなかった相続人から遺留分減殺請求を受けた、このような事例はよくあります。

遺言書が生前に遺留分対策をしていた場合はともかくとして、遺留分減殺請求を受けた側としては基本的には遺留分減殺請求のすべてを拒むということはできません。

他方で、遺留分減殺請求を受けた者としては素直に他方の相続人から受けた請求額を全て払わなければいけないかと言えばそういうわけでもありません。

以下では、遺留分減殺請求を受けた者が争う方法としてどのような手段があるか等について解説をしていきたいと思います。

 

遺産の評価額を争うことによって請求額を減らす。

まず、考えられる方法として、遺産の評価額を争うという方法です。

遺留分は遺産に対する最低限の割合ですので、遺産額を減らすことができれば、他方の相続人に渡す遺留分額を減らすことができます。

例えば、相続人が長男および次男の二名で、遺産は5000万円の預貯金及び不動産という場合において、長男に遺産を全て相続させるとの遺言書があったとします。

この場合、次男の個別的遺留分は4分の1なので、不動産の評価額が5000万円であれば遺産総額は1億円ということになり、次男は遺留分として2500万円を取得できることになります。

そして、2500万円の内訳としては、預貯金1250万円および不動産の持分4分の1(1250万円/5000万円)ということになります。

他方で、不動産の評価額が3000万円であった場合は、遺産総額は8000万円ということになり、次男は遺留分額として2000万円のみを取得できるにすぎません。

この場合、2000万円の内訳としては、預貯金1000万円および不動産の持分5分の1(1000万円/5000万円)ということになります。

このように、遺留分の請求を受けた側としては、遺産の評価額を争うことによって、遺留分減殺請求者に対する支払額を減らすことがてきます。

なお、よく問題になる不動産の評価方法については別記事で解説をしているので、ご参考になさってください。

遺留分減殺請求者の特別受益を主張する

遺留分権利者が被相続人の生前に被相続人から贈与を受けていた等、遺留分減殺請求権者に特別受益がある場合は、遺留分額から特別受益額が控除されることになります。

また、遺言書において、遺留分減殺請求者に相続させる財産があった場合も遺留分額から相続財産額が同様に控除されます。

したがって、遺留分減殺請求を受けた側としては、遺留分減殺請求権者が生前贈与を受けているか等特別受益がないかチェックすることが肝心です。

仮に、遺留分減殺請求権者が特別受益を受けていたとした場合は、特別受益を主張し、これが認められることによって遺留分額を減らすことができます。

もっとも、特別受益については、証拠による立証やそもそもの特別受益該当性の有無の問題があるので、この点については弁護士に相談されることをお勧めいたします。

 

価額弁償の意思表示を行い、金銭を支払う代わりに不動産等の現物を取得する

遺留分減殺請求額を減らす方法ではないですが、遺留分減殺請求を受けた側の手段として、価額弁償の意思表示を行うという方法があります。

この価額弁償の意思表示とは、遺留分減殺請求権者に対し金銭を支払う代わりに現物の移転を免れるという制度になります。

遺留分権利者から遺留分減殺請求をされた場合、受遺者は遺留分減殺請求権者に対し当然に金銭を支払うというわけではなく、例えば不動産であれば遺留分に反する限度で持分等が遺留分権者に移転するにすぎません。

ただ、遺留分減殺請求権者としては遺産の現物を渡すことが不都合である場合もありますので、このような場合は、遺留分減殺請求権者に対して価額弁償の意思表示を行い、現物に代えて現物の評価額相当の金銭を支払うことによって現物の移転を免れることができます。

なお、仮に価額弁償の意思表示をしたが、遺留分減殺請求権者が評価額等を争い、価額弁償金額が定まらない場合は、遺留分減殺請求を受けた側としては、裁判所に対し価額弁償額を確認する訴えを提起することができます。このような請求をすることによって、遺留分減殺請求を受けた側がイニシアチブをとることもできるのです。

終わりに

以上、他の相続人から遺留分減殺請求を受けた相続人がとるべき対応について解説をいたしました。

解説をしたとおり、遺留分減殺請求を受けたからといって、遺留分権者の請求額どおりの金銭等を渡さなければいけないわけではなく、受遺者として取るべき手段は複数あげられます。

ただ、遺留分減殺請求は計算方法等一見簡単なようで複雑であるため、同請求を受けた場合は、弁護士に相談することをお勧めいたします。

遺留分についてお悩みの方は無料相談を実施しておりますので、下記お電話番号にて、またはホームページもしくは本ブログのメール相談フォームからお気軽にお問い合わせください。

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