今日は地方出張がありましたので、帰りの電車の中で記事を書いています。

なかなかのハイペースで記事を書けていますが、これは、書ける時に書いておきたい…との考えによるものです。
さて今回は、特別受益と預貯金との関係です。
相続人の一人が被相続人から生前贈与等を受けている場合は特別受益の問題になり得ます。
それでは、被相続人からの生前贈与等が有り特別受益の問題になると思われる場合であっても、遺産が預貯金しかない場合でも特別受益の問題になるのでしょうか。

財産が預貯金だけの相続の場合は特別受益の問題にはならない

ここは非常に悩ましく、理屈を追及すると非常に難しい問題になるのですが、ひとまず結論を言うと、預貯金だけが遺産の場合は原則として特別受益は問題にならないというのが回答になります。
これは、以下の理由によります。
まず、特別受益というのは遺産分割によって分けるべき遺産がある場合に問題となる概念です。
そして、預貯金を含む可分債権というのは、最高裁判例によれば相続開始と同時に遺産分割を経ることなく分割されますので、特段の合意がない限りは遺産分割の対象にはなりません(但し、例外的に当事者の合意がある場合は遺産分割の対象となる遺産にすることは可能です。)。
したがって、生前贈与等が有り、特別受益の問題になりそうだとしても遺産分割の対象となる財産がない以上、特別受益による持戻し等の話にはならないのです。
追記:
最高裁判例の変更によってこの点についても変更される可能性があります。
詳しくは預貯金の遺産性に関する別記事をご参照ください。

わずかな預貯金と高い価値のある遺産の生前贈与

以上、預貯金のみの相続の場合に特別受益が問題とならないことを説明しました。
もっとも、預貯金のみの相続の場合に特別受益が問題にならないのであれば、預貯金以外の遺産を生前贈与して、あえて遺産を預貯金のみにすれば、意図的に特定の相続人を有利に扱うことができるのではないかと考える方もいるかもしれません。
例えば、被相続人の財産がわずかな預貯金と高額な不動産しかない場合で、被相続人が相続人の一人に対し不動産を生前贈与した場合であっても、被相続人が死亡した時点で遺産が預貯金しか無いことから他の相続人は何も言えないのでしょうか。
この場合、遺産は預貯金しかないため、やはり特別受益の話にはならないと言えます。
この場合は、他の相続人は特別受益による持戻を主張するのではなく、事案にもよりますが、生前贈与に対する遺留分の主張をすることができます。
これについては、ちょっと説明に時間がかかるため、また日をあらためて説明をしたいと思います。

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